2024年5月14日、澄んだ碧い空が広がる5月の日。それを残酷に打ち消し、鬱々とさせるニュースがテレビでもネットでも巡る。
高齢者の孤独死、推計年計6.8万人
この仕事に携わっている以上、このニュースを聞いて「意外でした」というと嘘になる。
ここ最近…とくにコロナ禍を経て、「誰にもみとられることなくお亡くなりになり、一定期間を経過後に発見される」方の葬儀を多く請負うことが増えてきた。
どんなふうに連絡がくるのかって?
深夜早朝に関わらず、こんな感じでご遺族の方から電話が入る。
「葬儀をお願いしたいのですが」
「今、故人様はどちらの病院にいらっしゃるのでしょうか?」
「病院ではなく、〇〇警察です」
「〇〇警察からご自宅へお連れすればよろしいのでしょうか」
「いえ、自宅には誰もいないし、遺体の状態も良くないので火葬の日までそちらで預かって下さい」
お亡くなりなってから数日経過した故人様は…とくに夏期は…とても家族に見せられる状態ではない。棺に納め、蓋をしめたとしても、臭気に耐えて通夜や葬儀を行うことは難しい。
遺族にとって故人の最後の姿が、後々まで印象に残る。
故人の尊厳のためにも、そして遺される家族の気持ちのためにも、孤独死は皆無にしたいのが本音だ。
行田セレモニーグループには「終活クラブ・ファミール」という会員組織がある。
これは前社長が立ちあげたもので、埼玉県行田市・熊谷市を中心に現在全国6,000世帯(18000人)に及ぶ。
地方のイチ葬儀社が運営する有料の会員組織としては、まあまあの規模ではないか。
もともと葬儀料金の割引適用が会員の特典であったが、
今は終活をテーマにしたイベントの企画と参加をサービスの主体にしている。
当然、終活のイベントなんて収益性なんてない。毎回赤字だ。
営利を目的にする企業としては失格だ。すぐに撤退すべきだ。
だから互助会や近隣の葬儀社は誰も取り組んでいない。
でも何故お前は続けているのかというと、「会員さんの孤立に抗いたい…」ただそれだけだ。
恥を忍んで白状すれば、自分は若い頃、会員さんの孤独死を経験した。
その方は以前、当社でご主人の葬儀を承り、一人暮らしをしていた細君だった。
母が亡くなったと、遠方に暮らしている家族から連絡が入ると、
会員さんは死後数日経って自宅で発見されていた。
同じ地域に住みながら、そして会員になってもらいながら、地元の企業として出来ることはなかったのだろうか。かつてご主人の葬儀に際にはよりそって葬儀を請負い、会員ご本人から喜ばれたことを思い出すと、自責の念に駆られた。
葬儀をあげて、お金をもらってハイ、それで終わり・・・
今流行りの安値を謳い、未熟でその場しのぎの売上を見込むビジネスモデルならばそれでいいだろう。
しかし地元でコツコツとマジメに仕事に向き合い、遺族に頼られるくらい適格で適正な葬儀を請負う当社には、葬儀を終えてからも相談やお問合せの電話が入る。
「法事のお布施はどれくらい包んだらいいでしょうか」
「故人が使っていた布団はどう処分したらいいでしょうか」
答えたって1円の利益にもならない。しかし分からないことや不安なことに回答を求めて当社に問合せしてくれるのは、それだけ頼りにされているという信頼があるからに他ならない。その信頼に応えるためにも、その時はどんなに忙しても面倒くさがらずに答えるようにしている。
にも関わらず、信頼を頂けた会員さんが孤独死を迎えてしまうことが、悔しい。
今、自分たちが出来ることは、ややもすれば社会から孤立しやすい会員さんたちへアプローチを定期的に発信、そしてコンタクトをとることだ。
健康のためにグラウンドゴルフ始めませんか。
ボケ防止のために健康マージャンの教室に来てみませんか。
誰かのプレゼントにフラワーアレンジメント教室で創ってみませんか。
大切な人を喪った気持ちを語り合うサークルに参加してみませんか。
・・・終活をテーマに、すべて社員たちが企画し運営している。
その告知のために、会員さんに定期発送しているのが、今回で188号になる会報誌「ファミール」だ。
今号ももりだくだんの内容20ページに及ぶ。
定年を終えても地域で活躍している会員さんの他、
ファミールの会員だけに割引があるショップの紹介や、
親睦旅行や映画祭等のイベント情報の発信など、
楽しくで役立つ編成になっている。
これを読んで、少しでも参加頂き、孤立を防いで頂ければ幸いだ。
そしてこれを可能な限り、当社社員が忙しい葬儀業務を合間を縫って、会員宅へ手配りしている。
つまりface to faceすることで、会員さんの安否が確認できるからだ。
儲けにならぬことを、しかも手間ヒマかけて行うことに笑えたければ笑え。
少なくとも、当社の会員から孤独死がでることは二度とないようにしたい。
ただその願いで、この事業をずっと長く続けている。
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